魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 そうだよね……誠一さんほどできる人なら、私がいてもいなくてもちゃんと結果を出していただろう。今なら簡単にわかるのに、当時そうやって考えられなかったのは精神的に余裕がなかったからだろうか。

 誠一さんのためになると思ってしたことが、まったく意味がなかったように感じて無力感に襲われる。

「結局、私がしたことは無駄だったんですね……」
「そんなことはない。こんなに早く業績を上向きにできたのは、仕事だけに全力を注ぐ時間を芽衣子が作ってくれたからだ。もちろん離婚してよかったわけじゃないが、離れた時間も無駄にはしなかったよ」

 頼もしい声に彼の心遣いを感じる。ただの慰めだとしても、落ち込んでいく気持ちを受け止めてもらえたような、救われた気分だ。

「でも、いつも寂しかった。君の顔が見たくて、声が聞きたくて、触れたかった」

 度量の大きさを見せつけた彼だが、本音を吐露して私の頬にそっと手を当てる。切なさが滲む情熱的な瞳で見つめられ、胸がきゅうっと締めつけられた。

「もう一度、君の人生を俺に預けてくれ。最期の瞬間まで愛し抜くと誓う」

 一度目とはまったく重さが違うプロポーズに、熱いものが込み上げてくる。こんな私に最上級の愛を注いでくれる、誰よりも尊い彼に誠心誠意応えなければ。

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