魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい

 再び夫婦として生きていくと決めた日の翌日は、初めて家族三人でゆっくり過ごした。出かけたのは近所のスーパーと公園くらいで、子供との普段の生活を誠一さんに体感してもらったような感じだ。

 恵茉は生まれた頃からよく輝さんと会っていたせいか、男性にもあまり人見知りをしない。とはいえ、輝さんを父親だと思ってしまわないよう一線を引いていたので、こんなに長い時間一緒にいるのは誠一さんが初めて。

 最初は嫌がったりしても仕方ないと覚悟していたものの、それは杞憂だった。意外にもすぐに誠一さんを気に入ったようで、彼が帰る時には不機嫌になってしまうくらいだったから。

 早くふたりに親子としての絆ができてほしいと願っているので、上々な滑り出しだ。しかし胸を撫で下ろす私とは反対に、誠一さんは娘の変化に戸惑ったり一生懸命宥めたりしていて、なんだかとても微笑ましかった。

 すぐにでも三人で暮らしたいところだったが、急に仕事を辞めるのは迷惑なので、しばらく母子ふたりの生活を続けながらいろいろな準備を進めた。

 輝さんは『ふたりがいなくなるなんて……羽田の近くに移転しようかな……』とぶつぶつ呟くほど寂しがっていたけれど、お店には定期的に通うつもりなのでなんとか立ち直ってほしい。

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