魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「まさに天使だな。本当に可愛い」
「すごくはしゃいでたから、家に帰ってもしばらく起きないかも。誠一さんも疲れたでしょう。連れてきてくれてありがとう」

 今日に限らず、誠一さんは忙しい日々を過ごしながらも毎日家族との時間を作ってくれている。急に子供と暮らすようになってストレスも溜まりそうなものだけれど、彼はそんなことをまったく感じさせず、今も表情は晴れやかだ。

「平気だよ。君たちの笑顔を見れば、疲れなんてどこかに飛んでいく」
「私も、ふたりがいればいつも笑顔でいられます」

 優しい眼差しを私に向ける誠一さんに、にこりと微笑んだ。彼はふいに含みのある表情になり、こちらに手を伸ばしてくる。

「恵茉がしばらく起きなそうなら、俺たちが愛し合う時間もあるな」

 私の右手に左手が重ねられると同時に意味を理解して、ドキリと心臓が跳ねた。

 私たちは再会してからまだ身体を重ねていない。正直、彼の肌が恋しくて悶々としていたところなので、彼の小指に指を絡めて「……そうですね」と返した。

 甘いひと時への期待が膨らむ自分にはしたない気分になっていると、誠一さんはどことなく不安げに問いかけてくる。

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