魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
御曹司は熱烈求婚する

 食事会も無事に終わったその日は、前の晩と同じホテルでひとりの夜を過ごした。梨衣子と笑顔で別れられたことで、もちろん寂しさはあるものの、それを上回る充足感を抱いて。

 明日から本格的にひとりの生活が始まるけれど、なんとかやっていけそう。どれもこれも羽澄さんのおかげだ。

 清々しい朝を迎え、朝食を済ませたら忘れ物のないようしっかりチェックをしてホテルを後にする。レインクーバーと呼ばれるほど雨の多いバンクーバーだが、今日も雲は薄くすっきりとした青空が覗いている。

 バンクーバー国際空港へ向かい、搭乗手続きを終えて歩き出した時、「芽衣ちゃん!」と聞き慣れた声がした。ぱっと振り向くと、昨日の晴れ姿とは一変したカジュアルなスタイルの梨衣子とディランさんが手を振っていて驚いた。

 結婚式の翌日で疲れているだろうから見送りはいいよと遠慮したのに、ふたりともわざわざ来てくれたらしい。すごく嬉しいけれど、申し訳ない気分にもなる。

「梨衣子! もう、大丈夫って言ったのに。ふたりとも疲れてるでしょ?」
「ダイジョブ、問題ないヨ」
「そうそう。だって、やっぱり会わずに離れるなんて嫌だったからさ。え、来ないほうがよかった?」
「違うよ、私だって来てほしかったけど!」

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