魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 思わず本音を言ってしまい口をつぐむと、梨衣子はクスクスと笑った。羽澄さんとの会話が脳裏をよぎり、私は自分の気持ちを押し殺すのが癖みたいになっていたんだなと気づく。

 梨衣子は微笑みつつも少し真面目な表情になり、私の腕をそっと掴む。

「そうやって遠慮するだろうから言っておくけど、なにか困ったこととかあったらすぐ連絡してね。頼られたほうがこっちは嬉しいの。私はディランの妻っていう前に、芽衣ちゃんのたったひとりの家族なんだから」

 彼女の親身な思いが伝わってきて、また目頭が熱くなった。

 これまでずっと梨衣子のためになにかしてあげたくて頑張っていたけれど、自分も頼っていいのだと改めて感じさせられる。全部、羽澄さんの言う通りだったのだ。

 瞬きで涙を散らし、晴れやかな笑顔を返して頷く。

「そうさせてもらうね。ありがとう。ひとりでもなんとか頑張れそうだから、梨衣子も心配しないで」

 強がりじゃなく、今は本当に心が前向きになっている。きっと梨衣子が温かい言葉をかけてくれただけでなく、羽澄さんが私の気持ちを汲み取って励ましてくれたおかげもあるだろう。

 私の笑顔を見て、梨衣子も安堵した様子だ。長い休みが取れたらまた会おうと約束をして、私たちは少し涙ぐみながらも明るく一時の別れを告げた。

< 25 / 212 >

この作品をシェア

pagetop