魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「本当に願いが叶ったな。芽衣子さん」
「……羽澄さん!」

 驚きすぎて、思わず飛び跳ねるように立ち上がる。その拍子にバッグを落としてしまい慌てて拾うと、同時に手を伸ばしてくれた彼と間近で視線がぶつかり、ドタバタ感がおかしくてお互い噴き出した。

 機長の証である金色の四本線が入った制服姿の彼はさらに麗しい。姿勢を戻して制帽を被り直す姿からも目が離せず、本当に羽澄さんだったんだ!と、信じられない気持ちで胸が高鳴る。

「驚いた。まさかこんなに早く会えるとは」
「ほんと、びっくりです……! 私も305便に乗っていて、アナウンスの声が似ていたのでもしかしたらと思って」
「よく気づいたな。それで俺を待っていたのか?」
「……はい」

 改めて確認されると恥ずかしくなってきて、頬がほんのり火照るのを感じながら縮こまった。

 よくよく考えれば、一度会っただけの女が待っているって怖いよね? 『また会おう』なんて社交辞令だったかもしれないのに。

 しかも彼は御曹司でありパイロットというとんでもないスペックをお持ちで、かたや私は日々ゴミや汚れを相手にしている空気のごとく目立たない存在。こうして話していること自体おこがましいのでは?

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