魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 あからさまに動揺し、とりあえず飲んだ温かいお茶でむせそうになりつつ、なにか別の話題がないかと頭の中で検索する。

「は、羽澄さんは、どうしてパイロットになったんですか? グループの中に航空会社があるから、身近な存在だったとか?」

 なんとか平静を装って、無難な質問をしてみた。彼のほうは当然ながら涼しげな表情になっていて、わずかに考えを巡らせるようにして「ああ」と頷く。

「小さい頃からよく飛行機に乗っていたから、自然とパイロットに憧れてたな。両親や周りからは、グループの会長である父の跡を継いでほしいとずっと頼まれてて、経営学部のある大学に進学する予定だったんだが、夢を諦めきれなくて急きょ航空大学校 に変更したんだ。おかげで周りは大騒ぎ」

 いたずらっ子のようにククッと笑う彼だが、急に進路を変えて難関の航空大学に受かるなんて、相当な努力が必要だったんじゃないだろうか。

「並大抵じゃないですよ、そんなことができるなんて」
「いや、昔からパイロットになるための勉強ばかりしていたからね。それに、反対を押し切って自分の道に進んだからには、結果を出さなきゃいけなかったし。まあ、好きなことだからがむしゃらにやれたんだよな」

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