航空王はママとベビーを甘い執着愛で囲い込む【大富豪シリーズ】
新妻候補は覚悟を決める

 バンクーバー旅行を終えて四日間の勤務が始まり、本格的に日常が戻ってきた。

 清掃員の仲間に連休をもらったお礼を言い、お土産のメイプルティーやカナダ限定のお菓子を配ると皆喜んでいた。女性が多い職場で気がいい人ばかりで、休憩時間はお茶会をするのがお決まりなのでお土産はこれが一番無難だろう。

 時差ボケと連休明けで怠かった身体が慣れてきた頃に、勤務三日目を迎えた。

 今私が担当しているのは、フロアの椅子やカーペット、ゴミ箱や手すりなど、ありとあらゆる場所の掃除。床は自動洗浄機が主に活躍しているので、その機械にはできない場所や細かい汚れを落とすのが仕事だ。

 ミディアムボブの髪を後ろでちょこんと縛り、紺色のユニフォームにキャップを被った姿で粛々とこなしていく。床に目を凝らすとスーツケースの黒い跡がついていることが多いので、見つけては丁寧に拭き取る。

 そうしてトイレの前にやってきて、入り口付近にあるゴミ箱を拭いていると、中から同じユニフォームを着た女性が出てきた。トイレ掃除を担当している、仲よしの郁代(いくよ)さんだ。

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