魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 車を降りてエントランスを抜け、玄関と言っていいのか?と疑問を持つくらい凝った装飾が施された建物の中へ、誠一さんに続いて入る。豪華なシャンデリアのまばゆさに目が眩みそうになる私を、使用人のひとりである男性が迎えてくれた。

 繊細で美しい調度品の数々やインテリアを見回し、思わずため息を漏らして映画のヒロインになったような気分でついていく。エレガントなパーティー会場さながらのリビングダイニングに入ると、待っていたご両親とついにご対面した。

 誠一さんに渋みをプラスしたようなイケオジなお父様と、ウェリントンの眼鏡がよく似合う美人なお母様。さすが大企業の社長とその夫人、といった貫禄が漂っている。

「彼女が柚谷芽衣子さん。俺の大切な人だ」

 誠一さんがまず切り出し、私はいろいろな意味でドキドキしつつも姿勢を正して一礼する。

「はじめまして……! 本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「こちらこそ、来てくれてありがとう。そんなに畏まらなくていいからね」

 意外にもとても温和な調子でお父様が返してくれて一瞬ほっとしたものの、彼の隣に立つお母様の口角がほんのわずかにしか上がっていなくてギクリとした。

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