魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
『広い世界を見せてあげたいの。ずっと贅沢してこなかったんだし、いい思いしてよ』と言って、今回の旅費はすべて梨衣子夫妻が支払ってくれたのだ。

 確かにこういう機会じゃないと絶対に来なかっただろう。梨衣子だって、ディランさんと付き合うようになってから海外へ連れていってもらうようになったのだし。

 彼とは私も何回か会ったが、真面目かつとても穏やかで、梨衣子を心から愛して大切にしてくれている。堅実で金銭面も安心できる人だし、素敵な人と結ばれて本当によかった。

 指輪を交換し、誓いのキスをするふたりに自然に笑みがこぼれ、温かな拍手を送った。

 ひと通りセレモニーが終わったら、少し場所を移動して集合写真を撮るらしい。バンクーバーでの結婚式は自由度が高いようで、こうして移動する間も新郎新婦と話す時間はわりとある。

 私は梨衣子のそばに歩み寄り、挙式の余韻を抱いたまま話しかける。

「梨衣子、すごく素敵な式だったよ。ふたりとも絵になってて、恋愛映画見てるみたいだった」
「え~照れるじゃ~ん。まあ、全部このドレスと異国の地のおかげだけどね」

 にんまりと頬を緩めた彼女は、綺麗なネイルを施した指でドレスのスカートをちょいっと持ち上げてみせた。

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