魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 嘘だとわかっているのに、胸がときめいてしまいそうになった。お父様は感動したように「お前がそんなに熱烈な男だったとは……」と呟くので、気恥ずかしさと罪悪感が混ざって複雑な気分になる。

 対するお母様は、表情を変えずに視線を私に移す。

「家柄の違い、ね。芽衣子さんの境遇についてはざっと聞いています。お母様を亡くされてから高卒で働き始めて、妹さんとふたりで生活してきたんですってね」
「はい……」
「確かに、私たちの会社のメリットになるようなものはなにも持っていないでしょう。とすれば、あなたは誠一になにをしてあげられる?」

 ストレートな質問にドキリとする。それは自分でも考えていたことで、言葉に詰まるものだった。

 まさか〝お見合い話を出されなくなります〟なんて正直に言えるわけがないし、頭の中で他のメリットを必死に探す。

 誠一さんは一瞬眉根を寄せ、やや苛立ちを露わにして口を挟む。

「母さん、俺はなにかをしてほしくて結婚するわけじゃ──」
「彼の生活を守ります!」

 思いつくものはそれしかない。なんとか認めてもらうために思いきって声をあげると、三人は押し黙って私に注目する。

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