魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 あっさりと遠慮のない物言いに変わるお母様に、お父様はがくりと肩を落としてうなだれた。〝さっちゃん〟って呼んでいるのね……可愛い。

 うまくバランスが取れた仲よし夫婦なんだなとほっこりしたのもつかの間、お母様に含みのある笑みを向けられてやや身構える。

「政略結婚で得られる恩恵を無にした分、今は日本アビエーションの経営を回復させるよう誠一を完璧にサポートしてあげてね。ゆくゆくは総帥としてハスミグループを背負っていってもらうつもりだから。期待してるわ」

 うわぁ、プレッシャー……。やっぱりいずれはお父様の跡を継いで、会長になるのを望まれているのね。改めて、すごい人の妻になってしまったな……。

 お母様からあからさまな圧を感じ、やっぱり厳しい人だと思いつつも「が、頑張ります」と笑顔で返した。

 その後は順調に進み、恋人ではないこともバレずに食事会を終えられた。お母様が掃除の仕方について興味津々に聞いてきたのが面白かったけれど、ふたりとも『空港が綺麗なのは芽衣子さんたちのおかげ』と言ってくれて嬉しかった。

 社会的地位が底辺に近い私を受け入れてくれたことからも、そういう部分だけで判断しない人たちなのだとわかる。誠一さんの心の広さや優しさはご両親譲りなのだろう。

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