魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「芽衣子の寝顔見てたらまた眠くなってきた……」
「えぇっ、いつから見てたんですか!? ていうか、見ないで──」

 すっぴんを見られた恥ずかしさで、今さらながら咄嗟に両手で顔を隠した時、あるものに気づいて「えっ」と声を漏らした。

 左手の薬指に、控えめだがしっかりと存在を主張するダイヤモンドがきらめいている。これは、入籍した頃にふたりでオーダーしていた結婚指輪だ。

 誠一さんの知り合いにデザイナーさんがいて、私たちよりはりきっていたおかげでフルオーダーで作ることになったのだが、いつの間にか仕上がっていたらしい。

 唯一無二の指輪は輝きからして一線を画しているように見える。ざっくりとした好みを伝えただけなのに、私にも馴染む上品なデザインに仕上げられていて感動した。

 アクセサリーの類を滅多につけない私は、自分にはもったいないほどのきらめきをしばし呆然と見つめて呟く。

「指輪、できたんですね! ちょっと涙が出そうなくらい綺麗……」
「昨日も休みだったから受け取ってきた。どうせなら驚かせてやろうと思って」
「ありがとうございます。すごく嬉しいです! 季節外れのサンタさんみたい」

 指輪を右手で包み込んで満面の笑みを浮かべる私を、誠一さんも満足げに微笑んで見つめていた。

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