魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 即座にディランさんが反応し、サッと彼女の細い腰を抱いて真剣に訴える。

「そんなことナイナイ! 梨衣子はactressみたいに可愛いんだから、ドレスはおまけだヨ」
「んっふふ。ちょっと、ディランのせいで変な笑い方しちゃった」

 甘く褒めちぎる旦那様に、梨衣子は嬉しさを隠せない様子。周りにハートを飛ばしているようなふたりは、本当に仲睦まじくてほっこりする。

 微笑ましくふたりを見ていると、梨衣子がこちらを振り向いて「芽衣ちゃん 」と呼ぶ。年があまり変わらないので、〝お姉ちゃん〟ではなくいつの間にかこう呼ばれるようになっていた。

「昨日は観光に連れ回しちゃったけど疲れてない? 楽しめてるかな」
「大丈夫、すごく楽しんでるよ! 梨衣子が『広い世界を見せてあげたい』って言った気持ちがよくわかった」

 心配そうな顔をする彼女に、私は明るい笑顔を返す。

 来る前は不安が大きかったものの、ホテルも日本語が通じるところを予約してもらったし、昨日は梨衣子が街を案内してくれたから普通に旅行を楽しめた。

 バンクーバーは日本人やアジア系の人が多くてわりと馴染みやすい国だけれど、当然日本ではないので戸惑うことばかりだ。でも逆に、外国だからこそ変に気を遣わなくていい部分もある。

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