魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 目覚めたら指輪をつけられていたなんて、クリスマスの朝を迎えた恋人同士のようじゃないか。そう思うとまた悶えたくなってきて、私はうつ伏せになって枕に顔を埋めた。

「どうした?」
「こんなシチュエーション、もうロマンチックすぎて……。ただの契約妻なのに、誠一さんは甘やかしすぎです」

 不思議そうにしていた彼がクスッと笑う。私の耳が熱くなっているのに気づいていないといいのだけど。

「契約とはいえ、夫婦は夫婦だ。妻を喜ばせたいと思うのは自然なことだろう」

 当たり前のように言う彼は、世の中の女性にとってかなり理想的な旦那様じゃないだろうか。私と結婚しているのがなんだか申し訳ない気分になってちらりと目を向けると、彼はやや嘲笑を混じらせる。

「と言いつつ、ただ君に捨てられたくないだけかもな」
「捨てるだなんて、そんな!」

 すぐに首を横に振って否定した私は、はたと気づいた。自分も同じ気持ちだと。


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