『異質のススメ』他人と違っているから個性、変わっているから貴重。
『荒廃』『創造』『発展』『堕落』『飽和』『集団』『絶滅』『革命』『混迷』『幻想』『終末』『飢餓』『衰退』『屈辱』『瞑想』『霊感』『昂揚』『救世』『共感』『慈悲』『崩壊』*

 それらは人類が繰り返してきた創造と破壊と再生の軌跡そのものだった。
「この中には2種類の言葉が混在しています。〈暗い未来を暗示する言葉〉と〈明るい未来を指し示す言葉〉です。暗い未来は、」
 一つ一つ指差していった。
『荒廃』『堕落』『飽和』『絶滅』『混迷』『幻想』『終末』『飢餓』『衰退』『屈辱』『崩壊』
 次に、明るい未来を指差した。
『創造』『発展』『集団』『革命』『瞑想』『霊感』『昂揚』『救世』『共感』『慈悲』
 わたしが頷くと、ふっと笑って、「簡単なんですよ。暗い未来を暗示する行動を避けて、明るい未来を指し示す行動をすればいいだけなんです。本当に簡単なんです。でもね」と口を閉じた瞬間、顔に影が射したような気がした。続けて発した声が暗く沈んでいた。
「私利私欲に目が眩んだ人たちが多くなると暗い未来が近寄ってくるんですよ。悪魔の囁きという武器を手にどんどん近寄ってくるんです」

 確かにその通りだった。
 独裁的な指導者、自己中心主義者、排他的な人たち、金の亡者たち、彼らによって世界は分断され、争いが増え、差別がはびこり、貧富の差は広がり、環境は破壊され、未知のウイルスによる死者は増え続けている。
 
「まるで、every bad boy deserveSFavourの世界に入り込んだような恐怖を覚えます」
 顔を歪めて視線を落としたが、その通りだと思った。
 世界は変わろうとしているだけでなく、強いリーダーと独裁者を混同した人々の言動が混乱に拍車をかけている。
 正に混迷は深まっているのだ。
 それを考えると憂鬱になってこれからのことを憂いながら歌詞カードを返したが、表情が曇っているのが気になったのか「ちょっと話が暗くなってしまいましたね」と反省するかのように頭を掻いたので、「いえ、とても大事なお話しだと思います。アフターコロナを考える時に進むべき道を指し示しているキーワードだと感じました」と即座に否定した。
 
「そう言っていただけると助かります」
 彼はちょっとほっとしたような表情になって歌詞カードをジャケットに仕舞い、レコードをラックに戻したが、そのまま動かず、労わるような感じでスピーカーの上面に右手を置いた。

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【引用】11ページと13ページの*部分

「童夢」ムーディーブルース(ユニバーサルミュージック)の1曲目「PROCESSION」のすべての歌詞・訳詞、及び、6曲目「ONE MORE TIME TO LIVE」の一部訳詞(訳者:板橋かの子)
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