『異質のススメ』 他人と違っているから個性、変わっているから貴重。
「お待たせしました」
 意外にもカプレーゼだった。
 トマトとモッツァレラとバジルがオリーブオイルと塩コショウでシンプルに味つけされていた。
「これはイタリアの料理ですけど、CAVAにとっても合うので我が家の定番なんですよ」
 トマトは自家製なのだという。
 その完熟の甘みがモッツァレラとオリーブオイルに溶け合ってなんとも言えず美味しかった。
 
 カプレーゼがなくなると共にCAVAが空くと、先見さんが立ち上がってワインを2本持ってきた。
 両方共にスペインのワインだという。
 リオハの赤とルエダの白だと説明したあと、これから出てくるピンチョスに好みで合わせて欲しいと2つのワイングラスに赤と白を注いだ。
 
 それを待っていたかのようにピンチョスの盛り合わせが運ばれてきた。
 イベリコハム、ハモンセラーノ、スモークサーモン、オイルサーディン、アンチョビが各3個、オリーブと共にバゲットの上に乗っていた。
 どれも美味しそうだ。
 早速イベリコハムを手に取って口に入れると、トマトベースのソースとの相性が抜群でいくらでも食べられそうに思えた。
 それでニンマリしていたら赤ワインを勧められたので鼻で香りを楽しんでから口に含むと、一気に口福に包まれた。
 思わず先見さんに向かって二度ほどクイックで頷くと、彼も嬉しそうな表情で頷き返してくれた。
 それからあとは肉系には赤、魚系には白を合わせて、マリアージュの妙味に唸り続けた。

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