『異質のススメ』他人と違っているから個性、変わっているから貴重。
 それを見ながら席を立った奥さんは「そのまま見てて」と言い残して台所へ向かったが、すぐに戻ってきて、「チェコ風オープンサンドはいかがかしら」と笑みを浮かべて料理をテーブルの上に置いた。
 皿には切ったフランスパンの上にハムやレタスやトマト、マヨネーズ風ソースなどを乗せたものがあった。
 具の上にパンが乗っていないのでオープンサンドというらしい。
 鮮やかな見た目に口の中で唾液が湧き出し、勧められるままに頬張ると、ハムと野菜とソースがパンに絡んで極上の旨味が口の中に広がった。
 更に、コクと風味のあるチェコのビールはこのサンドと相性抜群で、思わず頬が緩んでしまった。
 
 素晴らしいマリアージュに感心していると、映像がプラハ城の敷地内に変わった。
 城壁に囲まれた広大な敷地の中に旧王宮や宮殿、教会、修道院などが建っている。
 その中でも特にゴシック建築の大聖堂の威容には目を見張ってしまう。
 わたしはため息をつきながらその映像を見続けたが、映像の季節が秋に変わったところで先見さんが一時停止ボタンを押した。
 するとさっきとは違って奥さんは「ありがとう」と言って台所に向かったので、今度の料理は時間がかかるのかもしれないと思いながら後姿を見送ると、予想した通り、ちょっと間が空いて奥さんが戻ってきた。

「ビーフシチューをどうぞ」
 肉の煮込み料理がテーブルに置かれた。
 現地では『グラーシュ』と呼ばれているのだという。
 スプーンで肉をすくって食べると口の中でホロッと壊れたのでその柔らかさに思わず唸りそうになったし、濃厚なスープが絡むと更にうまみが増した。
 奥さんは本当に料理が上手だ。目をクリクリっという感じにさせてリスペクトの視線を投げた。

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