『異質のススメ』他人と違っているから個性、変わっているから貴重。
 ベストセラーコーナーの前には平日にもかかわらず多くの人がいて驚いたが、データ分析やマネジメントに関する各種啓発本を真剣に読んでいる姿を見ていると、必死なんだな、ということをひしひしと感じた。
 自分磨きや新たなスキルの獲得に懸命なのだと思うと、自分も負けていられないと気合が入った。
 しかしコーナーに並ぶ本は既に目を通したものも多かったので、ザーッと眺めて場所を変えた。
 
 経営者に関する棚の前で足を止めた。
 ソニーとホンダに関する本を探すためだ。
 思いのほか数が多かったので嬉しくなって手当たり次第に手に取ってパラパラとめくったが、自分の知っていることがほとんどですぐに興味を失った。
 だから手ぶらで帰ろうとしたが、何故か右目の端に気になる文言が飛び込んできて目が離せなくなった。
『わが友 本田宗一郎』
井深が本田について語った本のようだった。
読み始めるとページをめくる手が止まらなくなった。
急いでレジに持っていき、脇目もふらずに自宅に戻った。

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