『異質のススメ』他人と違っているから個性、変わっているから貴重。
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 先見さんから電話がかかってきたのは、9月16日のことだった。
 猛暑はピークを過ぎ、最高気温が30度を切る日が続いていた。
 最低気温も25度を切り、暑くて眠れないという状態から脱していた。
 そのせいか、奥さんの体調もすっかり元に戻ったと、スマホから明るい声が聞こえてきた。
 
 翌17日は朝からはっきりしない天気だった。
 どんよりと曇っており、午後から小雨の予報が出ていた。
 最高気温は28度くらいらしい。
 テレビはどのチャンネルも新首相誕生のニュースで溢れかえっていた。
 そして、閣僚人事と解散時期について、ああでもないこうでもないと解説者たちが持論を述べていた。
 
 わたしは耳だけそのニュースに貸して朝食の準備を始めた。
 いつもはミルクとパンと卵料理だが、今日は気温が下がったので和食にすることにした。
 といっても作るのはみそ汁だけだ。
 豆腐とわかめが入った小鍋に出汁入り味噌を溶かせば終わり。
 その間に冷凍していたご飯をチンすれば完成。
 あとはキュウリの浅漬けと納豆と梅干とシソ。
 どれも昨日スーパーで買ってきたものばかりだ。
 といっても和食に違いはない。
 久しぶりに日本人になったような気がしておいしくいただいた。

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