『異質のススメ』他人と違っているから個性、変わっているから貴重。
 2000年代に入ってのベストセラーは自己啓発本が多く、小説で大ヒットしたものは少ないという。
 一部の人気作家が気を吐いているが、多くの小説は増刷もされずに消えていくのだという。
「書店のスペースは限られていますから、売れない本を長く留め置くことはあり得ないのです。それに書店の数自体が減ってきていますから、益々厳しい状況になっています。知名度のない新人作家が育たないのはそういう流通面の問題もあるのです。しかしそれだけではなく、コアな小説ファンだけを相手にした今のやり方にも大きな問題があると考えています」
 新人賞には大きく分けて『純文学』と『大衆文学』があり、その募集要項には『既成観念にとらわれない意欲的な作品を期待しています』とか『今までにない衝撃的な作品をお待ちしております』とか記載されているが、何をもって意欲的なのか、何をもって衝撃的なのかというのが提示されていないのだという。
 それに、衝撃的とか意欲的とかという言葉が独り歩きして無理なプロット(筋書きや展開)を促しているのではないかという。
「普通の人が読みたいのは普通の小説なんですよ。奇をてらったものを読みたいとは思っていないんですよ」
 それがコアな小説ファンとは大きく違う点なのだという。
「いわゆるビジネス書や啓発本を読んでいる人は〈現実的な課題にどう対処していくのか〉という視点で本を読んでいます。だから、それに応えるような小説でないと読む気にならないんです」

 小説には様々なジャンルがあり、推理小説、ホラー小説、SF小説、ファンタジー小説、青春小説、恋愛小説、歴史小説、時代小説、官能小説などに分類されるが、所謂ビジネスマンに向けた小説はこの中には少ないのだという。

< 96 / 99 >

この作品をシェア

pagetop