『異質のススメ』他人と違っているから個性、変わっているから貴重。
「問題はそれだけではありません。そもそもコアな小説ファン自体が減っているのです。2019年に実施した文化庁の調査によると、1か月に1冊も本を読まない人は47.3パーセントもいるという恐ろしい結果が出ました。日本人の半分近くは本を読まないということです。その中で小説を読む人はどれくらいいるでしょうか? 正確な調査結果がないので具体的な数字を挙げることはできませんが、かなり少なくなっていると思います。特に従来型の小説を好む人は激減しているのではないでしょうか。毎年発表されるベストセラーの総合ランキングを見ても、上位20位のうち小説は3作くらいしか入っていないのです。それらを総合的に考えると、コアな小説ファンは100万人を切っているかもしれません。そんな状況の中で毎年多くの新人賞受賞作が出版されるわけですが、それらはほとんど売れていません。何故なら、受賞作の多くは限られた小説ファン向けでしかないからです。逆に言えば、潜在的に大きな可能性を秘めているその他の人たちに訴求できる作品が選ばれていないということが大きな理由なのです」
 それは理解できる気がした。
 しかし、どうしてそうなるのかがわからなかったので尋ねると、禅問答のような答えが返ってきた。

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