乃々と貸別荘の話
エピローグ
「なんでこいつを呼んだ?」
腕組みをした蒼空が怒り笑いで聞いた。
塀から花が咲きこぼれる乃々の家のガレージ。
乃々は、庭のベンチに座って、蒼空を見上げた。
「僕が来たいって言ったんだ。それが?」
恭は、乃々の隣に座って、立っている蒼空を睨み返した。
さっき車から出てきたばかりの恭は、チャイムの音で乃々が家から出てくると、玄関で乃々を抱きしめた。
遅れて乃々の家から出てきた蒼空は、それを見て慌てて2人を引き剥がしたのだった。
「それがじゃねーよ。何しに来たんだよ」
「別に。黒沢さんと遊びに。北谷と2人にならない様に」
「うざった。乃々は僕の恋人。お前は部外者で関係ないだろ。」
「恋人?は?誰が?黒沢さんは僕と約束したんだよね?」
恭が乃々を見るのと同時に蒼空が乃々を睨んだので、乃々は固まった。
「……」
「黒沢さん」
蒼空の視線は乃々を逸れ、庭の塀の横に停めてある自分の自転車で止まった。
この頃よく自転車で乃々の家に遊びに来る蒼空と、それに合わせて車でやって来ようとする恭。
「いちいち邪魔しに来んな。面倒くさい」
「面倒くさいのはお前だろ。なんで近くに住んでるんだよ。腹立つな」
「遊ぶ度に乗り付けてくんじゃねーよストーカーか?お前。帰れよ家にこれから!」
「帰る訳ないだろ」
靴を履いた足元を見て乃々がほう、と満足のため息をついた。
おわり