離婚した元旦那様、恥ずかしいので心の中でだけ私を溺愛するのはやめてください、全て聞こえています。
心臓が飛び跳ねるほど驚いて、朧は振り返った。
朧は、ばくばくとうるさい心臓をなだめながらも、無理やり笑顔を取り繕う。
「何のことでしょう?」
震える声で尋ねると、湊斗はやはり無表情のまま淡々と答える。
「俺の異能、『龍の眼』を甘くみるな。
俺は、他人の記憶を読むことができる。
当然、他人が抱えている、別に知りたくもない秘密だって、知ってしまうことがある」
朧の額を冷や汗が濡らす。
「昨夜、わたしが無能力者だと言ったこと、ご両親から聞いたんですか?」
「聞いた。
自分に異能がないと嘘をついてまで、そこまでして、よっぽど離婚したいんだろうと思ったから、特に両親にも教えなかった」
「で、でも、湊斗さんとわたしは、今初めて会ったのに、昨夜の時点で、どうして嘘をついたのだとわかったんですか?」
湊斗は、面倒臭そうに長くさらさらな黒髪をかき上げると、眠そうな眼で朧を見た。
「龍ケ崎の人間が持つ力を、お前たちの常識の範疇におさめるのは無駄だと思え。
俺の『異能』がひとつだと、誰が言った?」
「……他に異能が……?」
「そうだ。『千里眼』。
遠くのものを視る能力がある」
「千里眼……?
あっ、じゃあ……」
「理解したか?
遠くからでも、この家で起きたことは、把握できる。
両親とお前の間の確執も、全て承知している。
当然、お前の記憶も確認済みだ」
湊斗の言葉に、朧はあんぐりと口を開ける。
湊斗は、何の義理もないのに、富子や定国に朧の異能を隠し、味方をしてくれたということなのだろうか。
「うちの両親、さぞかしうざかっただろう?
悪かったな、迷惑をかけた」
「い、いえ、そんな……」
予想外の湊斗の謝罪に、朧はますますしどろもどろになって焦ったように、ひらひらと両手を振る。
湊斗は表情を変えないまま続けた。
「お前と、俺の異能は似ているな。
知りたくない相手の本音や本心を、嫌でも知ってしまう。
だから、上辺を取り繕う人間に嫌気がさして、人間嫌いになる」
それが、湊斗が無愛想な理由なのか、と納得しながらも、朧は眉をひそめる。
先程から、朧はずっと、湊斗に対してある疑問を持っていた。
確かに、湊斗の言う通り、朧には、他人の心を読む異能がある。
朧は、ばくばくとうるさい心臓をなだめながらも、無理やり笑顔を取り繕う。
「何のことでしょう?」
震える声で尋ねると、湊斗はやはり無表情のまま淡々と答える。
「俺の異能、『龍の眼』を甘くみるな。
俺は、他人の記憶を読むことができる。
当然、他人が抱えている、別に知りたくもない秘密だって、知ってしまうことがある」
朧の額を冷や汗が濡らす。
「昨夜、わたしが無能力者だと言ったこと、ご両親から聞いたんですか?」
「聞いた。
自分に異能がないと嘘をついてまで、そこまでして、よっぽど離婚したいんだろうと思ったから、特に両親にも教えなかった」
「で、でも、湊斗さんとわたしは、今初めて会ったのに、昨夜の時点で、どうして嘘をついたのだとわかったんですか?」
湊斗は、面倒臭そうに長くさらさらな黒髪をかき上げると、眠そうな眼で朧を見た。
「龍ケ崎の人間が持つ力を、お前たちの常識の範疇におさめるのは無駄だと思え。
俺の『異能』がひとつだと、誰が言った?」
「……他に異能が……?」
「そうだ。『千里眼』。
遠くのものを視る能力がある」
「千里眼……?
あっ、じゃあ……」
「理解したか?
遠くからでも、この家で起きたことは、把握できる。
両親とお前の間の確執も、全て承知している。
当然、お前の記憶も確認済みだ」
湊斗の言葉に、朧はあんぐりと口を開ける。
湊斗は、何の義理もないのに、富子や定国に朧の異能を隠し、味方をしてくれたということなのだろうか。
「うちの両親、さぞかしうざかっただろう?
悪かったな、迷惑をかけた」
「い、いえ、そんな……」
予想外の湊斗の謝罪に、朧はますますしどろもどろになって焦ったように、ひらひらと両手を振る。
湊斗は表情を変えないまま続けた。
「お前と、俺の異能は似ているな。
知りたくない相手の本音や本心を、嫌でも知ってしまう。
だから、上辺を取り繕う人間に嫌気がさして、人間嫌いになる」
それが、湊斗が無愛想な理由なのか、と納得しながらも、朧は眉をひそめる。
先程から、朧はずっと、湊斗に対してある疑問を持っていた。
確かに、湊斗の言う通り、朧には、他人の心を読む異能がある。