悪妃になんて、ならなきゃよかった
 戻って来たのは夕食後で……
つまり、サイフォスとの昼食をすっぽかしたのだ。
しかも身を隠す事で、長時間待たせるという嫌がらせ付きで。

 忙しい王太子に、それどころか国の2番手にここまでするのは、さすがにヴィオラも気が引けたが……
ここまでしなければ通用しないと判断しての事だった。

 そして、これなら激怒するだろうと。
少なくとも、もう2度と誘って来ないだろうと踏んでいた。
誘っても、またすっぽかされるかもしれないからだ。

 しかし、ヴィオラ自身もわかっていた事だが……
その代償は大きく。
戻った時、宮殿は王太子妃の失踪に大騒ぎで……
多くの人に迷惑をかけた事に、ヴィオラは心を痛めていた。

 もちろんそれも、悪妃作戦の一環として狙った事だが……
生家でショックな出来事を知ったヴィオラは、もうどうすればいいのかわからなくなっていた。

 とはいえ、悪妃作戦自体は功を成し。
謝罪も弁解もせず、憂いていた態度は……
これまでの悪態から、皆の心配を煩わしく思っているように見え。

 じわじわ広がり始めていた悪妃の噂は、この騒ぎで一気に宮中に広まったのだった。



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