悪妃になんて、ならなきゃよかった

心配

ーーラピズに会いたい。

 サイフォスとの食事をすっぽかして、生家に向かったのは……
単独行動の危険から、身の安全を図るためでもあったが。
ラピズに会うためでもあった。

 その手配をしたリモネは、当然単独行動に反対して。
「私も同行いたします」と譲らなかったが……
そうすればリモネまで、むしろリモネの方が責められると思い。
ヴィオラは頑なに拒んだのだった。

 また、シュトラント公爵には生家への訪問を隠していたため。
内通の侍女の協力で、留守中を狙って訪れたのだった。
鉢合わせていたら、怒られて追い返されていただろう。

 そして本当は、ラピズとも会うべきじゃないとわかっていた。
会えばお互い、辛くなるだけだからだ。

 それでも一目会いたかったのは、悪妃を演じるのが辛くなっていたからだ。
自分の目的のために、罪のない人や関係のない人にまで迷惑をかけている事に……
ヴィオラは心が折れそうになっていた。

 だけど、愛しい人の姿を目に焼きつければ……
ラピズのためにと、悪妃をやり遂げられそうな気がしていたのだ。
離婚が叶えば、ラピズとやり直せるかもしれないのだから。

 ヴィオラは、そんな昨日の事とラピズの姿を思い浮かべていた。


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