悪妃になんて、ならなきゃよかった
 翡翠色の髪にエメラルドの瞳を携えたラピズは、やんちゃさを覗かせた甘いマスクで。
ひとたび剣を握れば、その眼光は鋭く変化し。
その腕前は、右に出る者がいないほどだった。
そのため、身分が低いにもかかわらず、多くの女性たちに言い寄られてきた。

 その身分は、元々はシュトラント家の使用人の息子で。
ヴィオラを守るために、同家の騎士となったのだった。

 2人は長い友人関係を経て、自然と恋人関係に発展し。
シュトラント伯爵はその関係を許しながらも、周りには秘密にする事を条件としていた。
というのも、娘の結婚相手は伯爵家と同等かそれ以上の身分の者と考えていたため。
良縁の妨げになるのを防ぎたかったからだ。
 しかしその一方で、ラピズの腕も高く評価していたため。
王宮騎士に抜擢されるなど、その出世次第だと考えていた。

 そんな時、まさかの王太子からの求婚を受け。
2人は別れるしかなかったわけだか……
その時ヴィオラは、まだ悪妃計画を考えてなかったため。
「一生愛してる」と言ってくれたラピズに、「ラピズの幸せを祈ってる」と返す事しか出来なかった。

 もちろん、悪妃計画を実行している今でも。
離婚出来る保証はないため、何も言えないのだが……
それを成功させるためにも。
そして、ラピズが元気にしてるか様子を見るためにも。
ヴィオラは早く会いたかった。


 ところが……

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