悪妃になんて、ならなきゃよかった
「ここにはいないっ?
じゃあラピズは、どこにいるの?」

「それが……」
侍女たちは顔を見合わせ、覚悟を決めたように話し始めた。

「実は半月ほど前に、突然騎士を辞められて……
それ以来、行方がわからなくなっています」

「嘘でしょっ……
そんな大事な事、どうしてすぐに教えてくれなかったのっ!?」

「申し訳ございません!
公爵様から、お嬢様には秘密にするようにと、固く口止めされていたので……」

ーー私がショックを受けないように?
いいえきっと、この事実を知ったら、王太子妃を投げ出すかもしれないと思ったのね?

 そう、ヴィオラへの配慮なら……
侍女たちが自らの立場を危うくしてまで、軽々しく打ち明けるはずなどなかった。
 なにより、ラピズの未来を引き合いに出されて、それが1番の決め手になって、結婚に踏み切った経緯から……
こうなってしまっては、この結婚がそれに対しての役割を果たさなくなってしまうからだ。

 となると、公爵を問い詰めたところで……
本当の事は話してくれないだろうと。
それどころか、保身を捨てて真実を打ち明けてくれた侍女たちが責められてしまうと。
ヴィオラはどうする事も出来なかった。

 そして思い立ったように。
何か手掛かりはないかと、ラピズの部屋を探索したが……
それらしいものは何も見つからず。

「何か情報が入ったら、すぐに教えてちょうだい」と。
侍女たちにお願いして、ヴィオラは屋敷を後にしたのだった。



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