悪妃になんて、ならなきゃよかった
 ヴィオラは心苦しさと、それを悟られないようにするために、向き戻れずにいると……
サイフォスから「皆下がってくれ」と人払いがされた。


「何がそんなに気に入らない」
2人切りになったところで、サイフォスがヴィオラの側に歩み寄る。

「っ何が?
私の立場で、本音を明かせるとお思いですかっ?」

 そう、ラピズの事を明かせば……
せっかく見つかっても、今度は追放されかねない。
その上、2人の関係を隠していたシュトラント公爵の立場まで危うくなる。

「問題ない。
何を聞いても、咎める気はない」

「それを信じられるとでも?」

「だが聞かなければ対応出来ない」

「していただかなくて結構です」

「……頼む、教えてくれ。
これ以上君を悪者にしたくない」

ーー私のためにっ?
これほどまでの非礼や侮辱を受けながら、保身のためではなく相手を気遣うサイフォスに、またしても心を揺さぶられる。

 だが悪妃だと思われたいヴィオラにとっては、無用な気遣いで。
なにより、ラピズの事を思うと絆されるわけにはいかなくて。
そんな自分を振り払うように、サイフォスの優しさを跳ね除けた。

「ほっといてください!
性格が悪いのは元からですっ。
なので、直すつもりはございませんのでっ」
その途端。

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