悪妃になんて、ならなきゃよかった
「あらどうしましょう。
妃殿下に美味しく召し上がっていただこうと、魔法で冷たくしても固まらないようにしてもらったのですが……
早く着替えないと、風邪をひいてしまいますわね。
なので私は、これで失礼いたします。
でもまた、サイフォス様に酷い事をなさったら……
その時は再び、お邪魔させていただきますわね?」

 フラワベルがそう立ち去ろうとすると。
ヴィオラは「お待ちください」と引き止めた。

「これは、殿下の差し金ですか?」

「まさか。
ここへは私が勝手に来ただけですし、これも不慮のアクシデントにすぎません」

 しかしその態度から、故意に嫌がらせに来たのは明白だった。

ーーきっと彼女は、殿下の事が好きなのね?

「そうですか。
では部外者という事で、今後はここへの来訪を禁じます」

 本音を言えば……
自分の最低な行為を、こんなふうに罰せられは方が気が楽だった。
でもこんな事が続けば、フラワベルの方が悪役に見えてしまうと。
それでは悪妃計画が無意味どころか、逆効果になってしまうと。
それらを防ごうとしたのだ。

 そしてもう一つ。
自らの立場を悪くしてまで、サイフォスのために悪役になっているフラワベルこそ。
あの優しいサイフォスに相応しいと思い。
これ以上汚名を着せるわけにはいかないと、考えての事だった。

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