悪妃になんて、ならなきゃよかった
「……それもそうだな。
ならば、好きな色を好きなだけ買うといい」

「っ、結構です」

ーーそれじゃあ私の浪費なんて、むしろ謙虚に見えるじゃないっ。

「遠慮するな。
俺から全色のドレスと宝石を、同じだけ贈られたくなければな」
そう素っ気なく言い放つと。
サイフォスはウォルター卿に急かされるようにして、ヴィオラの部屋から出て行った。

ーーなんなのっ?
もしかして悪妃作戦を妨害する嫌がらせなの!?
相変わらずの素っ気ない言動に、思わずそう考えたくなる。

 というのも。
こうも青ばかり選ぶ、素直さや単純さは……
もはや可愛いらしくて。
くすぐられる胸を、打ち消したかったからでもあった。

 なにより。
施療院に寄付するという、同じ考えをしていたサイフォスに……
心が惹きつけられていて、必死にそれに抗っていた。

 なぜなら、本来寄付は修道院にするのが通例で。
それに付属する施設の、施療院にされる事はほとんどないからだ。
しかも実際の救済活動は、施療院が担っていたが……
貴族や王族が、そんな貧民たちの現状を知る由もなかったからだ。

 ヴィオラは伯爵令嬢だったが、リモネが施療院出身だったため、それに関わり現状を知っていたが……
王太子であるサイフォスからその名称が出てくるのは、考えられない事だった。

 それは貧民にもしっかり目を向けているといった、サイフォスの人間性を示しているようで……
心が惹きつけられるは、無理もなかったのだ。

 そのため悪妃作戦を、またしても躊躇う気持ちになったが……
そんなサイフォスだからこそ、やはり太陽のようなフラワベルが相応しいと。
ヴィオラは次なる作戦に、頭を捻らせたのだった。



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