悪妃になんて、ならなきゃよかった

剣術大会1

 次なる悪妃作戦が思いつかないまま、10日ほどが過ぎ……
その間ヴィオラは、ラピズ探しに手を尽くしていた。

 だか依然として、その消息は掴めず。
ヴィオラは日に日に落ち込んでいった。

 そんな時。
部屋にやって来たサイフォスから、興味深い事を持ち掛けられる。

「剣術観戦が好きだと聞いた。
それで、剣術大会を企画したんだが、ようやくその手筈が整った。
開催は一週間後だ、楽しみにしていてくれ」

「……観戦前提なのですね。
私が断るとは思いませんでしたか?」

 そこで見かねたウォルター卿が、「妃殿下!」と口を挟む。

「殿下は妃殿下を喜ばせようと、忙しい最中寝る間も惜しんで、このために奔走していたのですよっ?」

 するとサイフォスは威圧のオーラで、制止の手をかざした。

「先走ってすまなかった。
だがこの大会には、国中から凄腕の剣士を集めている。
見応えがあるものになるだろう。
それにシュトラント公爵を始め、多くの貴族たちも観戦する事になっている。
君が顔を出さないわけにはいかないだろう?」

ーーやられた!
またしても舌を巻くヴィオラ。
断れば、父親の顔を潰してしまうだけじゃなく。
今後は監視の目が向けられて、悪妃に扮するのが難しくなるからだ。

 それに実際。
そのような見応えがある大会を特等席で観戦出来る、またとないチャンスでもあった。

「……そうですね。
殿下の策略通り、観戦して差し上げます」
せめてもの嫌味を零すも。
その内心は、剣術大会を心待ちにしていた。

 もしかしたらラピズが参加するかもしれないと、淡い期待も抱いていたからだ。

 さらにこの大会を機に、次なる悪妃作戦も思い付く。


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