悪妃になんて、ならなきゃよかった
 しかし、ヴィオラの悪妃に扮した嫌がらせは、それだけでは終わらなかった。

 次の日は……
おびただしい数のアクセサリーから、髪飾りやイヤリング、ネックレスやブレスレットなどを選んでもらい。

 その次の日は……
靴や扇子などの小物や、香水などを選んでもらい。

 さらに次の日は……
あれこれ試行した中から、髪型を決めてもらい。

 最終日には、優勝者への謝辞まで一緒に考えてもらったのだった。

 とはいえその内心は、申し訳なさでいっぱいで……
日に日に遣り切れなくなっていて、平静を装うのに必死だった。

 でもその甲斐あって。
もう限界だとウンザリするように仕向けた作戦は、見事に功を奏していた。

 ただし、ウンザリしたのはウォルター卿の方で。
ヴィオラのせいで連日無理をしていたサイフォスを、目の当たりにして来たウォルター卿は……
この件で、心底ヴィオラを嫌いになったのだった。

 肝心のサイフォスはというと……
ウンザリするどころか、自分を頼ってくれてるヴィオラを、その力になれる事を、心底嬉しく思っていた。

 そのため、毎回親身に、とことん真剣に選んでいて……
それがヴィオラをいっそう苦しめていた。

 なぜなら、大会の日……
そうやって選んでくれたものを、1つも身に付けるつもりがなかったからだ。

ーーもういやっ。
これ以上殿下を傷つけたくない!
だからお願い、早く私を見限ってください……
そう切に、願うしかなかった。



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