悪妃になんて、ならなきゃよかった

剣術大会3

 そうして、剣術大会が始まると……
会場は活気に満ちあふれ、ヴィオラは胸を躍らせた。

ーーすごい!
今の剣さばき、かなりの達人ねっ。

 とそこで、視線を感じて。
そちらの方に目を向けると……
剣士の一人が、ヴィオラを熱い視線で見つめていた。

 美しいヴィオラにとって、そういった視線を向けられる事は、日常茶飯事だったが……
その剣士の視線は格別で、どこか思い詰めてるようだった。

ーーなんなの?
怪訝に思いながらも、釘づけになっていると。

「……どうした、ヴィオラ」
サイフォスに声かけられる。

「っ、いえ。
本当に凄腕の剣士たちばかりで、夢中になっていました。
これほどの剣士たちを、よく集めましたね」

「ああ。
上位10人の剣士には、順位に応じた高額の賞金と、名誉称号も与える事にしているからだ。
そのため、類を見ないほどの参加者が募り。
事前に予選も行ったから、こうも強者ばかりなのだ。
おかげでヴィオラを夢中にさせることが出来て、なりよりだ」

 その言葉で、ヴィオラはウォルター卿の言葉を思い出す。

~「殿下は妃殿下を喜ばせようと、忙しい最中寝る間も惜しんで、このために奔走していたのですよっ?」~

ーーこんな非礼な妃のために、これほど大規模な事をしてくれてたなんて……
胸がぎゅっと締め付けられる。

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