悪妃になんて、ならなきゃよかった
「……撤回します」

「撤回は受け付けない」

「そんなっ、」

 その時。
大会の進行役から、王太子の余興が告げられ。
会場が、かつてないほどの大盛況に包まれる。

「もう後戻り出来ない。
行ってくる」

「待ってください!
少しはご自分のお立場をお考えくださいっ。
殿下っ!」

 だがサイフォスは行ってしまい……

「無駄ですよ、言い出したら聞きませんから。
ですが……
もし殿下に何かあったら、妃殿下のせいですから」
ウォルター卿にそう睨まれる。

 自分のせいになるのは、一向に構わなかったが……

ーーどうか殿下が、無事でありますように。
そう願わずにはいられなかった。
と同時に、そんな自分が理解出来ずにいた。

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