悪妃になんて、ならなきゃよかった
「ですがそのような勝ち方では、憧れるどころか……
幻滅しました」

「……だろうな」
素っ気なく答えながらも、落ち込む気持ちを隠しきれないサイフォス。

「妃殿下!」
あなたのせいでこんな大怪我をしたというのに!と言わんばかりに、見かねたウォルター卿が怒鳴りつけると。

「何だ」
俺の妃に文句でもあるのか?と言わんばかりに、サイフォスがウォルター卿を睨みつけた。

「っいえ、何でもありません……」

「ならば気安く呼ぶな。
あと、言い方に気を付けろ」

「……はい、申し訳ございません」

 心身共に深手を負いながらも、なおも守ろうとしてくれてるサイフォスに。
ヴィオラはいっそう胸を痛めるも……
心から王太子を心配しているウォルター卿を、不憫に思った。

 とはいえ、悪妃らしくプイと立ち去ろうとすると。
サイフォスに名前を呼び止められる。

「何でしょう?」

「……心配かけて、すまなかった」

ーーもう、それは私だけじゃないでしょう?

「そう思うのなら、もう危険な真似はおやめください。
あと、私は別に心配などしていません。
謝るのなら、周りの心配している方にどうぞ」
ヴィオラがそう言い捨てて、席に戻ると。

 その指摘に、ハッとしたサイフォスは……
「皆も、すまなかった」
ウォルター卿を筆頭に、周りにそう告げた。

「滅相もございませんっ」
皆は王太子の謝罪に恐縮しながらも。
その素直さに、いっそう慕う気持ちを募らさせたのだった。


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