悪妃になんて、ならなきゃよかった
 サイフォスの手当てが終わると、すぐに表彰式が執り行われた。

 下位の剣士から順に、王太子から賞金と名誉称号が授けられ……
最後に優勝者のランド・スピアーズに、それらが授けられた。

「身に余る、光栄に存じます」
その声は、ラピズのものとは違っており。

ーーやっぱり別人だったのね……
ヴィオラは肩を落とすも。
その意味深な態度といい、そっくりな佇まいや技量といい、ラピズの関係者である事は明白だった。

 そのため、どうにか接触出来ないかと考えを巡らせると……

「それと優勝者には、その望みも聞く事になっている。
ランド・スピアーズ、お前の望みを申してみよ」

「はい、私の望みは……」
そこで視線がヴィオラに向けられて。
その心臓が、ドクリと跳ね上がる。

ーー待って、何を言う気なのっ?

 ラピズの関係者となると……
王太子妃との離婚や、ヴィオラの奪還を望むかもしれない。
しかしいくら望みを聞くと言っても、当然常識の範囲内で……
そんな望みを口にすれば、反逆罪で処刑されかねないのだった。

 ところが、焦る気持ちとは逆に。
「王太子妃殿下の、」
そう続いた言葉に、ヴィオラは激しく狼狽える。

ーーダメっ、言っちゃダメ!!

「護衛騎士に、なりたく存じます」

ーー護衛騎士っ?
その望みに、一瞬拍子抜けするも。
妃殿下のという名指しは、不審な目を向けられるに決まっていた。

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