悪妃になんて、ならなきゃよかった

悪妃作戦

 翌朝。

「おはようございます、お嬢様。
じゃなかった!失礼しました、王太子妃殿下」

「おはよう、リモネ。
言い方には気をつけてちょうだい」
ヴィオラは冷たく言い放った。

「はいっ、申し訳ございません」

 リモネは、ヴィオラが実家から連れてきた侍女だった。
長年真心を込めて仕えていたため、ヴィオラからの信頼は厚く、いつしか親友のような存在になっていた。
そのため今までは、崩し敬語を使う事が多かったが……
それではリモネが宮廷侍女に見下されてしまうと思い、ヴィオラは注意したのだった。

 また、リモネにだけは悪妃計画を話していたため。
作戦の一環として、冷たい態度をとるようにもしていた。

「それより、ウォルター卿に呼ばれてたらしいけど、何の用だったの?」

 ヴィオラが目覚めた時、リモネは不在で。
宮廷侍女に所在を尋ねたところ、そう告げられたのだった。

「はい実は、王太子殿下の使いでいらっしゃり、殿下に拝謁しておりました」

「殿下に?」

 この時2人は知らなかったが……
ウォルター卿という人物は、サイフォスの側近であった。

「それで、殿下は何用だったの?」

「はい、妃殿下について色々と尋ねられました。
好きな食べ物や、苦手な食べ物。
好きな色や好きな事など……」

ーーもしかして、それを参考にして気を引こうとしてるの?
だったら私は、どう対応すれば悪妃らしいかしら?

「……そう。
何をしてくださるのか、楽しみね」
と、ヴィオラは期待を膨らませた。

 上手くいけば、早々に離婚出来るかもしれないと。



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