再会したエリート警視とお見合い最愛婚

「南さんだからミナ?」

「ああ。同期の間ではそう呼んでいるんだ。彩乃が見かけたときは、捜査で協力してもらう必要があり、一緒に居たんだ。個人的に会ってた訳じゃない」

「捜査?」

「ああ。付き合っているって話は、彼女がふざけ半分に言っただけで事実無根だ。言い訳に聞こえるかもしれないがそれが真実だ。彩乃に誤解して欲しくないんだ」

「私、蒼士さんの言葉を信じたいと思ってます......でも私は蒼士さんがどんな仕事をしているかなにも知らなかったから。あの人と食事をしに来たのかと思ったの。蒼士さんを見かけたのが銀座の有名なレストランの前だったから」

 蒼士はすぐに思いあたったようで、罪悪感を持ったように顔をしかめる。

「あのレストランの支配人に話を聞いていたんだ。だが彩乃が近くに居たことに気付かなかったなんて......刑事失格だな」

 そんな結論になるとは思ってもいなかったので、彩乃は慌てて否定する。

「それは私が咄嗟に隠れてしまったから。ずっと蒼士さんに会いたいと思っていたくせに、あのときは動揺して出ていけなかったの」

「ごめんな。仕事のために別居したのに、そんな場面を見たら驚くのは当然だ」

 蒼士は本当に申し訳なく感じているようだった。

 彩乃に誤解をさせて自分の行動を後悔している。

 真摯な様子は彼の言葉を信じられるものだった。

 きっと南とは彼が言う通り仲がよい同僚なのだろう。彩乃にとっての夏美のような存在なのかもしれない。

 彼にとって信頼出来る同僚が女性なのは、少し嫉妬してしまう。

 けれど今は嫉妬して悲観的になるよりも、なぜ嫉妬するのか素直な気持ちを伝えなくては、何も変わらない。

(早く言わなくちゃ)

 蒼士に自分の気持ちを素直に伝えると決心していた。すごく勇気がいることで緊張するけれど、勇気を出して......。

「彩乃に伝えたいことがあるんだ」

 口を開こうとしたそのとき、蒼士がどこか緊張した様子でそう言った。
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