再会したエリート警視とお見合い最愛婚
「頂くって、滝川さんは本当に真面目だな。でも気にしないで大丈夫。運がいいことに明日も休日なんだ。午前中は予定が入っているが、午後からなら空いている」

「そうなんですか? それなら......」

 本音を言えば、蒼士に案内して貰えるのは助かる。

「せっかく仲良くなったんだ。観光の後に食事もしよう」

(それに......北条さんとこれきりになるのは寂しい)

 今日会ったばかりとは思えない程、彼に親しみを感じている。もっと彼と話したい。彼のことが知りたい。

「ご迷惑ではなかったら......お願いします」

「ああ。楽しみだな」

「はい、すごく」

 その後少しおしゃべりをしてから、蒼士にホテルの前まで送って貰い別れた。

 一日中歩き回ったので体はくたくただったけれど、シャワーを浴びて広いベッドに横たわってもなかなか眠気が訪れなかった。

(北条蒼士さん......)

 彩乃の窮地を救ってくれた、優しくて頼りになって......すごくかっこいい大人の男性。

 幼い頃の淡い初恋以降、恋愛とは無縁だった。友人達が楽しそうに恋バナをするのを見て、少し羨ましいと思っても、誰かを好きになりはしなかった。

 それなのに、今彩乃の胸はドキドキと高鳴り、頭の中は蒼士でいっぱいになっている。

(一目惚れとは違うと思うけど)

 彼を好まく感じて、別れたばかりなのに明日が楽しみでうきうきして......。

(早く会いたいな......)

 彩乃はごろりと寝返りを打つ。目を閉じてもなかなか眠れそうになかった。



 翌朝。前日よりも少し遅く目が覚めた。

 正午過ぎに蒼士と約束をしているので、朝食後に近くを見て回ってみるつもりでいた。

 ところが、身支度を整えて部屋を出ようとしたそのとき、スマートフォンが鳴った。

 パリに来て初めての着信だ。画面を確認すると父からだった。

(日本は夕方だよね? お父さんは勤務中のはずだけど)

 父が仕事中に私用電話をして来ることは滅多にない。

 恐らく急用だろうと、彩乃は少し緊張しながら画面をタップして耳に当てた。

「はい」
『彩乃。今どこにいる?』

 父の声はどこか焦りが滲んでいた。ますます戸惑いながら、彩乃は返事をする。

「ホテルの部屋だけど、何かあったの?」

『今から言うことを落ち着いて聞きなさい』
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