再会したエリート警視とお見合い最愛婚
 縁談はとんとん拍子に進み、翌週に顔合わせが決まった。

 お相手は難関の国家公務員総合職試験を通過し警察庁に採用された警察官僚。いわゆるキャリアという警察組織の中に一握りしかいないエリートだそうだ。

 警察庁から警視庁の捜査二課に出向し、管理官として現場の指揮を執っているとのこと。現在の階級は警視だが、近い内に警視正になるそうだ。

 素晴らしい経歴で、父の娘という立場がなかったら、彩乃が関わることなどないような人だ。

 見合いが決まってから三日後の夜。

 シャワーを終えてから自室で寛いでいたところに、職場から帰宅して父に呼びだされた。

「お父さん、お帰りなさい」

 リビングのソファに腰を下ろしていた父の顔に笑みが広がった。

「彩乃、ただいま」

 体が大きく強面で厳しい空気を漂わせる父だが、娘にはかなり甘い。

 ひと睨みで犯罪者も凍らせそうな厳しい眼光はどこにもなく、目じりを下げて彩乃を出迎え、隣に座るように言った。

「遅くに呼んで悪いな。身上書が届いたから彩乃に早く渡したかったんだ。しっかり目を通しておきなさい」

「はい」

 彩乃は父から身上書を受け取ると、少し緊張しながら表紙を開いた。

(優しそうな人だといいんだけど)
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