再会したエリート警視とお見合い最愛婚
 蒼士は佐藤に視線を移した。

「奈良野から話を聞きましょう」

「だが......任意の事情聴取では内島議員が拒否する可能性が高い。かと言って令状を取るのは無理だ」

 佐藤の顔色は悪かった。予想していた以上の大物が登場したからだろう。

 場合によっては圧力がかかることを覚悟しなくてはならない。自分が責任者の捜査では避けたくなるようなプレッシャーがかかる事態だ。佐藤の反応は理解できる。

 それでも怖気づく分けにはいかない。不正を正し利権を排除するのは捜査二課の責務なのだら。

「そもそもなぜ内島議員が関係していると考えたんだ? これまでの捜査で彼の名前は上がっていなかっただろう?」

 たしかに佐藤が言う通り、これまでの捜査結果に、内島議員はかすりもしていなかった。けれど。

「私がフランスに飛ぶ前、刑事局長のお供でとある大物政治家の屋敷に新年の挨拶に伺ったんです。そこで内島議員と女性が会話をしているところを見かけました」

「それが......今回の件とどう関係するんだ?」

「その女性は三枝の元秘書です。五年以上前に退職しており捜査線上に上がっていなかった為気付くのが遅れましたが、三枝と内島議員の接点と言えるでしょう」

 捜査が行き詰まり、全ての資料を見直しているときに女性秘書の写真を見つけ記憶が一気に蘇ったのだ。新年を迎え賑わう中、深刻な表情で話すふたりが異端に映ったときのことを。

「そんな些末なことで疑うのか?」

「ほんの僅かな違和感にも大きな意味がある。以前佐藤さんが言った言葉ですよ」

「......分かった。内島議員の秘書奈良野の取り調べができるよう根回しをしよう」

「よろしくお願いします」

 その後、他の捜査員の報告を受け、今後の方針を決定してから会議は終了した。

 二日後。佐藤の調整により、テサラ通信とは関係のない理由で、奈良野に取り調べをすることが決定した。

 ただ先日から臨時国会が開催され多忙なため、蒼士と新藤が議員会館に出向くことになっている。

 本部を出て国会議事堂方面に向かう。

「思ったより早く許可が下りて良かったです。正直内島議員は抵抗すると思っていまいた」

 新藤はよかったと言いながらも浮かない顔だ。

「どうした?」

「......実は嫌な予感がするんですよ」

 蒼士は、思わず眉を顰める。
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