一度は諦めた恋なのに、エリート警視とお見合いで再会!?~最愛妻になるなんて想定外です~
「なんだよ、それ。彩乃は相変わらず抜けたところがあるな」

 蒼士はそう言いながら近付き、彩乃の手元に注目する。

「何を食べてるんだ?」

「プリン味のモナカなんです。蒼士さんも食べてみますか?」

「プリン? ......美味いのか?」

 蒼士が怪訝そうな顔をする。気が進まなそうな表情だ。

「はい。すごく美味しくて今一番のお気に入りです」

「彩乃がそうまで言うならひと欠片貰おうかな」

 彩乃はすぐにモナカの端を割り、蒼士に渡そうとした。

 ところが彼は手を出して来ない。

 どうしたのかと彩乃は首を傾げたが、次の瞬間にいつか蒼士にリゾットを食べさせて貰ったことを思い出した。
(あ、蒼士さんも口に入れてくれるのを待ってるのかな?)

「蒼士さん、はいどうぞ」

 ドキドキしながら男らしい口元にモナカを持っていくと、彼は形のよい目を丸くした。

「え? ......あ、悪いな」

 そう言って控え目に口を開いたので、そのまま口に運んであげる。

 自然と距離が近づくから彼の整った顔がすぐ近くに有って、彩乃の心臓はますます乱れてしまう。

(緊張して手が震えちゃいそう。蒼士さんは平然としてるけど)

「どうですか?」

 食べ終えた蒼士が、目を細めた。つい見とれてしまい魅力的な微笑みだ。

「まさか彩乃が食べさせてくれるとは思わなかった」

「え? だって蒼士さんが受け取らなかったから......そういう意味で待ってたんじゃないんですか?」

「いや、手がふさがっていただけ」

 言われてみると、確かに彼の右手はビジネスバッグを掴み、左手には白いビニール袋の手提げがあった。

「え......ということは、私の勘違い?」

「そうみたいだな」

 くすりと笑いながら言われて、彩乃は今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られた。

(私ってばなんて勘違いを......)

 エリート警察官僚を、子供扱いしてしまうなんて。

 焦る彩乃を蒼士は面白そうに眺めている。

「ごめんなさい」

「いや、嬉しかったよ。彩乃が食べさせてくれたからかモナカも美味しく感じたしな」

「そ、そうですか......」

 居たたまれなさを感じていると、蒼士が白いビニール袋を持ち上げてみせた。

「これ駅前で買って来たんだ。半分ずつ食べないか?」

「え? あ、たこやきだ」

「そう。久し振りに食べたくなって買って来たんだ」

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