再会したエリート警視とお見合い最愛婚
「私も久しぶりです。お皿に移しますね。あ、蒼士さん夕ご飯は?」

 まだだったらたこ焼きだけでは足りなそうだ。

「食べて来た。これは夜食だ」

「分かりました。それじゃあお茶だけ持ってこよう」

 彩乃はキッチンに行き、手早く準備を整えてリビングに戻った。

 勘違いをして恥ずかしい思いはしたけれど、久しぶりの蒼士との時間に気持ちが舞い上がっている。

 テーブルに皿とコップを並べていると、スーツから着替えた蒼士がやって来た。

「食べようか」

「はい!」

 おしゃべりをしながら、たこ焼きをつまむ。

「髪を切ったんだな」

 蒼士が彩乃をじっと見つめながら言った。

「そうなんです、気分転換したくて。気付いて貰えてよかった」

 彩乃が頷くと、蒼士が優しく微笑む。

「帰って来てすぐに気が付いたが、彩乃が頬を膨らませている方が気になって言いそびれた」

「そ、それは忘れてください」

「いや、それは無理だな」

「そんなあ......」

 年下だから仕方ないけれど、蒼士に子供扱いされてしまう。

(こんなことじゃ、いつまで経っても進展しなそう)

「短い髪も似合うな。ふわふわした感じが彩乃によく似う」

「え......」

 内心凹んでいたところに、突然褒められて彩乃はぽかんとしてしまう。

「可愛いよ」

 彼の端正な顔に、笑みが広がり、彩乃の胸はときめいた。

 照れてしまって顔を伏せると、肩の上でくるんとカールをしてある艶やかなブラウンの髪がふわりと弾んだ。

(蒼士さんに褒められちゃった! ヘアサロンに行ってよかったな)

 彼との会話は楽しく、時間を忘れてしまう。

 彼も彩乃との時間を楽しんでくれているようで盛り上がり、途中で赤ワインを開けて乾杯した。

「たこ焼きとワインって意外と合うかも」

 普段あまりお酒を飲まない彩乃でも、飲みやすく感じてするする喉を通っていく。

「そうだな。でも彩乃は弱いからほどほどにしないとな」

「ええ? そんなことないのに」

 もっと蒼士と同じお酒を楽しみたいのにと、不満そうに唇を尖らせると、蒼士が優しく笑う。

「もう顔が赤くなってるのに?」

 彩乃は思わず自分の頬を手で押さえる。彼が指摘した通りほんのり熱を持っていた。

 たしかに少し前からふわふわした気分で、心臓もドキドキして落ち着かない。

(でもそれはお酒じゃなくて、蒼士さんと過ごしてるから)
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