再会したエリート警視とお見合い最愛婚
 久々の彼との時間がうれしくて、舞い上がっているのだ。

(蒼士が好き......大好き......)

 彼の彩乃に対する気持ちが、恋愛感情ではなく、ただの情だったとしてもそれでも側にいたい。

(どうすれば好きになってくれるのかな......)

 自分なりに頑張っているつもりだけれど、蒼士に届いているのだろうか。

(......届いてないよね)

 内心がっかりしたそのとき、蒼士が戸惑ったような声を出す。

「どうかしたのか?」

「え?」

「悲しそうな顔をしている」

 彼がとても心配そうに彩乃の顔を覗き込む。

(悲しいのは蒼士さんが遠く感じるから、だなんて言えないよね)

 言っても困らせてしまうだけだ。

 それでも切なくて、彩乃はそっと蒼士の肩にもたれかかった。

「少し寂しくなっただけです。でもこうしていたら元気になります」

 酔っていないつもりだったけれど、やはりアルコールのせいで大胆になっているみたいだ。そうでなかったら、こんなふうに彼にくっつくなんて出来ない。

「ホームシックか?」

 蒼士は戸惑いながらも、彩乃を受け止めてくれる。

「やっぱり彩乃は酔いやすいな。俺と一緒のときはいいけど、それ以外では気をつけろよ」

「うん、分かってます」

 蒼士の言葉がうれしくて、彩乃は微笑んだ。

 なんだか、彼の妻だと認められたような気がしたのだ。

(もっと奥さんとして見てくれたらいいのに)

 そんな願いを込めながら見つめたが、なぜか蒼士に目をそらされてしまう。

「蒼士さん?」

 呼びかけると、彼は困ったように眉を下げる。

「そろそろ寝たほうがいい。眠そうな顔してるぞ」

「してないです! まだ全然眠くないし」

 せっかくの彼との時間なのに眠るなんてもったいない。 けれど蒼士は彩乃を自室に戻れという。 少し意地になって抵抗していると、蒼士がはあとため息を吐いた。

「彩乃。そんなにくっついたら駄目だ。俺だっていつまでも理性が持つとは限らないんだぞ?」

「理性?」

 首をかしげると、蒼士が彩乃をじっと見つめながら言う。

「このまま押し倒されたくないなら、もう部屋に行くんだ」

 彩乃は小さく息をのんだ。

「でも......私たちは夫婦だから......まだ一緒にいたい」

 後半は頼りない小さい声だから彼に届かなかったかもしれない。
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