再会したエリート警視とお見合い最愛婚
「うーん、どうしよう......」

 蒼士と行って見たいところが沢山あり過ぎて、ひとつに絞るのが難しい。

(天気がいいから少し足を延ばして、紅葉を見に行くのもいいかな? それともテーマパークで遊ぶのもいいかな?)

 貴重な休日を満喫したい。そう思いあれこれ考えていたが、ふと蒼士の顔を見て気が付いた。

(蒼士さん、顔色がよくないかも......目の下にクマも出来てるし)

 間違いなく疲労の現れだ。口にも態度にも出さないけれど、かなり疲れているのだろう。

 ここ最近の彼は連日長時間労働をこなしていたのだから、当たり前のことだ。

 彩乃は申し訳ない気持ちに襲われ、目を伏せた。

(本当はゆっくりしたいのに、私に気遣って誘ってくれたんだよね)

 もしかしたら、彼も彩乃のように気まずくなってしまった関係をなんとかしようと考えてくれたのかもしれない。

 少し考えてから彩乃は口を開いた。

「蒼士さんと一緒にのんびり散歩をしたいです」

「散歩? そんなのでいいのか?」

「はい。皇居の周りとか東京駅周辺とか。よく観光客を見かけるところだけど、意外と私はゆっくり見て回ったことがなくて。SNSで美味しそうなレストランがあるのも見たので、行ってみたいです。蒼士さんは新鮮味がないかもしれないけど」

 慣れたところでゆっくり過ごせば、彼も負担が少ないと思う。

「分かった。彩乃がそう言うなら明日はゆっくり散歩しようか」

「はい、すごく楽しみだな」

 それは本当の気持ちだった。

 どんなアトラクションよりも、彼と共有する時間が大切だから。



 翌日は朝八時。ゆっくり眠ってから支度をしてマンションを出た。

 東京駅も皇居も、霞が関から近いから、蒼士にとっては見慣れた光景だ。

 けれど彩乃が選んだカフェに入るのは初めてらしく、それなりに楽しんでくれているように見える。

 ジョギングのコースにもなる外(がい)苑(えん)をゆっくり散歩して、彩乃が調べておいたレストランに入った。

 ステーキやハンバーグが絶品と評判の店で、蒼士も満足できたようだ。

 その後は広大な地下街でショッピング。

 いつもは素通りするような東京土産と書いてある商品をじっくり見るのは意外と楽しい。

 蒼士はそんな彩乃を見守りながら、自分も興味があるものを見ていたようだけれど、
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