一度は諦めた恋なのに、エリート警視とお見合いで再会!?~最愛妻になるなんて想定外です~
「そうか。夜はゆっくりしたいし、夕飯はデリバリーにしようか。何が食べたい?」

 蒼士の様子はいつも通りで、地下街で感じた違和感はもうなくなっていた。

(私の気のせいだったのかな?)

 焦って帰ろうとしたのは、それだけ彩乃の足を心配してくれたからかもしれない。

 それに、ついはしゃいで蒼士をあちこち連れまわしてしまったけれど、彼は連日の仕事で疲労している身で、帰りたいと思っても当然だ。

(私って駄目だな)

 彼にゆっくりして欲しいと思いながら、久しぶりのデートが楽しくてはしゃいでしまい、気遣いを疎かにしてしまうなんて。

 せめてこの後は寛いでもらおう。

 マンションに戻ってすぐに夕食を注文した。
 ふたりで相談して釜飯の店にして、蒼士が鰻、彩乃が鯛の釜飯を選んだ。

 届くまではそれぞれ自由に過ごす。

 蒼士は同僚から電話が来たと言い、自室に入った。微かに話し声がする。

 彩乃は楽なルームウエアに着替えをしてから、リビングに戻りローテーブルに今日地下街で買って来たものを並べた。

 散歩がメインだったはずなのに、結構いろいろ買っている。

 レースの刺繍が可愛い日傘と、日常使いに良さそうなバナナクリップ。ハーブのバス用品に、ちょっと高級な出汁など。

 どれも特別なものではないけれど、彼と一緒に見て回ったのは、楽しい思い出になった。

 広げたものを丁寧に仕舞っていると、インターフォンが鳴った。

「あ、もう来たんだ」

 予想より早いけれど、お腹が空いているから丁度いい。

 彩乃がソファから立ち上がり応答しようとすると、蒼士が自室から出て来て素早くモニターのボタンを押した。

「はい。開けますのでおはいりください」

 蒼士はそう言いモニターを切ると、彩乃を見た。

「俺が出るから」

 お茶を淹れてダイニングテーブルに並べていると、釜飯を受け取った蒼士が戻ってきた。

 出来上がってすぐに届けてくれたようで、温かくていい匂いがする。

 今日の出来事を振り返りながら楽しく会話をし、釜飯を食べ終えお茶を飲んだ。

(今日は本当に楽しかったな......)

 ランチで寄ったステーキハウスで、蒼士は大のサーロインステーキを注文していた。

 大きさにびっくりする彩乃を見て蒼士は笑い、彩乃用にと小さく取り分けてくれた。
< 54 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop