一度は諦めた恋なのに、エリート警視とお見合いで再会!?～最愛妻になるなんて想定外です～

　彩乃も自分が頼んだハンバーグをお裾分けして、美味しいねと味の感想を言い合い夢中でおしゃべりをして......悩んでいた気まずさなど吹き飛んでしまったほどだ。

　こんな風に蒼士とふたりでゆっくり過ごすのは本当に久しぶりだった。

（これからも時々でいいから、お休みが取れたらいいのにな）

　楽しかった時間の余韻に浸っていると、蒼士がふいに笑みを消した深刻そうな表情になった。

「彩乃、大切な話があるんだ」

「......はい」

　彼の態度から、重要な話だと伝わってくる。彩乃は緊張感を覚えながら手にしていた湯呑をテーブルに置き居住まいを正す。

「しばらくの間、実家に戻って欲しいんだ」

「......え？」

　彩乃は茫然と呟いた。深刻な話だろうと予想はしていたが、まさか別居を言われるなんて思ってもいなかったから。

「どうして......あの、私なにか蒼士さんが嫌になるようなことをしましたか？」

　まだ結婚して一カ月と少ししか経ってない。同居開始日から一週間くらいは一緒にいる時間が多かったが、最近の蒼士は仕事が忙しくて、顔を合わす機会も少なくて、だからこそ別居を言われる原因が思い当たらない。さっきまで楽しく過ごしていたはずなのに。

（私......気づかないうちに蒼士さんを怒らせてしまったの？）

　見るからに動揺している彩乃に、蒼士が慌てた様ように言葉を続ける。

「彩乃は何も悪くない。誤解しないで欲しいんだが、別居は一時的なものだ......仕事で少し問題があって、当分帰宅出来ない日が続くと思う。彩乃をひとりにするのが心配だから、その間実家から仕事に通って欲しいんだ」

「......別居はどれくらいになりそうなんですか？」

「まだはっきりと約束できないが、おそらく一カ月くらいになると思う」

「一カ月......」

　離れているのには、あまりに長く感じる期間だ。

　彩乃は落胆して俯いた。

　蒼士の気持ちは理解出来る。　仕事が佳境になりより神経を使わなくてはならないときに、家で彩乃が待っている
と思うと落ち着かないのだろう。

　気が散ってしまい、仕事が捗らないのかもしれない。　彼はあまり帰宅しないのだから、食事の準備もいらないし、他の家事もたいして必要ない。

　彩乃がいなくても全く問題ない状況なのだ。むしろ居ることで、蒼士の負担が増える。