一度は諦めた恋なのに、エリート警視とお見合いで再会!?~最愛妻になるなんて想定外です~

「娘は任せなさい。うちに居る限り心配はない」

 彩乃を溺愛している滝川次長は、二つ返事で引き受けてくれた。

 娘の安全の為には、蒼士の意見が正しいと判断したのだろう。

 けれど、別居を伝えたときの彩乃は明らかにショックを受けていた。

 その反応は当然だ。結婚して二カ月もしない内に実家に帰るように言われたら、誰だって驚くし怒りを覚える。

 住まいを変えるのは大変なことだ。蒼士の勝手な都合で振り回されていると感じるに決まっている。それに時期も最悪だった。

 あの夜......お酒を飲んで無防備になった彩乃からは清純でありながら、女としての色気が漂っていた。

 蒼士を見つめる目は何かを訴えるように潤み、小さな唇は今すぐキスをしたくなるほど色づいて見えた。

 いつも蒼士に対して遠慮をして礼儀正しい態度を崩さない彼女が、まるで甘えるかのようにもたれてきて、愛しさがこみ上げるのを抑えられなくなった。

 抱きしめたい。求める気持ちのまま彼女を腕の中に閉じ込めた。それでも必死に理性を総動員して引き返そうとしたけれど......結局想いを遂げるように彩乃を抱いた。

 逸る気持ちを抑え、可能な限り優しくしたつもりだ。

 それでも、あんな風に抱くつもりはなかった。もっと時間をかけて、彩乃の気持ちが蒼士に向くのを待ってから。そう決めたいたのに。

 その後謝罪をしたが、気まずくなってしまった。

 このままではいけない。そう思い仕事を調整して休日をもぎ取り、彩乃をデートに誘った。

 ふたりで過ごし、自分の気持ちを伝えようと思っていたのだ。

 初めて会ったときから好きだった。愛しているから抱いたのだと。

 それなのに、結局蒼士の想いはなにひとつ伝えられず、別居を伝えることになってしまうなんて。

 彼女を悲しませていると思うだけで、蒼士の胸もきりきり痛んだ。他の手段が取れない不甲斐ない自分に苛立ちを覚えた。

 それでも翌日の昼には彩乃を実家に送った。彼女は明らかに元気がない。

「滝川次長には事情を説明している。彩乃にはなんの問題もないともしっかり伝えた」

「......はい」

 少しでも気が楽になればいいと思い、そう伝えたが、あまり彼女の心には響かない
ようだった。
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