再会したエリート警視とお見合い最愛婚
 ふとそんな考えが浮かぶ。

 蒼士の口数が少ないことに気付いたのか、佐藤が話題を変えて来た。

「三枝の元秘書の顔写真は見たか?」

「はい」

 昨日、元秘書の同僚から、彼女が失踪する数日前の写真が提供されている。

「他の写真と比べてがらりと変わっていて驚いたよ。整形か」

「いえ、化粧でしょう」

 確かに雰囲気は変わっていたが、骨格に変化は見られない。

 目元を強調し、堀を深く見せるメイクだと思った。毛先が内巻きにカールした艶やかな髪は、もしかしたらウイッグなのかもしれない。

「いつも思うが女は怖いな。元秘書は今年四十のはずだが、写真に映る顔は二十代と言われても信じられるほど若い。髪型も彩乃さんとそっくりだった」

 佐藤の言葉に、蒼士ははっとして息を呑んだ。

 写真で見た元秘書の髪は、今の彩乃と同じくらい。肩すれすれの長さだった。

 けれど、佐藤が知っている見合いの席での彩乃は着物姿で、髪は綺麗に纏めており、正確な長さも普段のヘアスタイルも分からないはずだ。

 それなのに元秘書と同じだと思うだろうか。

 似ているのだと判断したのだとしたら、今の彩乃を見ているからではないだろうか。彼女が髪を切ったのは、蒼士と同居をはじめてから。

(だが一体どこで彩乃を見たんだ?)

「どうした?」

 佐藤が怪訝そうに聞いてきた。

「いえ。似ているかと考えていただけですよ」

 蒼士は動揺する心を隠し、にこりと微笑む。

 佐藤に対する違和感が、蒼士の中で膨らんでいた。




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